モーツァルト/ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466
No.105 : 協奏曲
昨日「NHK交響楽団郡山公演」を聴いてきました。
指揮は尾高忠明さん、ピアノ独奏はデビュー30周年を迎えられた仲道郁代さんで、プログラムは
モーツァルト/ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466
(アンコール曲 ショパン/ノクターン第20番)
ブラームス/交響曲第1番ハ短調Op.68
(アンコール曲 メンデルスゾーン/交響曲第2番第1楽章から)
でした。
拙ブログでは、前回にブラームスをエントリーしましたので、今回はモーツァルトです。
モーツァルトは1784年にピアノ協奏曲第14番~第19番を、1785年には第20番~第22番、そして1786年には第23番~第25番まで合計12曲ものピアノ協奏曲の傑作を作曲しています。この集中は恐ろしいばかりの奇跡といえます。喩えとして相応しいかどうかは別として、昔、ある科学雑誌に『われわれの銀河系とアンドロメダ銀河とは遠い将来に衝突をするだろう』との記事がありました。そして、『その時に莫大なエネルギーが衝撃波となって放出され、新しい恒星が次々に誕生する』らしいのです。
モーツァルトにしてもベートーヴェンにしても、ある時、集中的に何曲もの傑作をものにしていますが、彼らの脳裡には、新しい恒星の誕生のようなメロディーの衝撃波が次々と押し寄せてきていたのかもしれませんね。
さてモーツァルトの書いた全27曲のピアノ協奏曲のうち、この曲と第24番のみが短調で書かれています。モーツァルトは長調で哀しい音楽を書けた天才でしたから、敢えて短調で悲しみを前面に押し出さなくてもよかったはずです。モーツァルトがなぜ短調のピアノ協奏曲を書いたのかは、今も不明だそうですが、完成した「ニ短調」のピアノ協奏曲は、出だしからただならぬ緊張感を漂わせた傑作になりました。私的にも大好きな一曲で、「第27番」の次によく聴くモーツァルトのピアノ協奏曲です。
推薦盤
disc1 : クララ・ハスキル(p)
マルケヴィッチ/コンセール・ラムルー管弦楽団
併録曲:モーツァルト/ピアノ協奏曲第24番ハ短調K.491
輸入盤LP 仏PHILIPS 835 075AY ピンク白HI-FI
録音:1960年
*ハスキルが亡くなる僅か1ヶ月前に録音した歴史的名盤。
深い表現力と豊かな情感、気品の高さなど感銘深い演奏です。
推薦盤
disc2 : クリフォード・カーゾン(p)
ブリテン/イギリス室内管弦楽団
併録曲:モーツァルト/ピアノ協奏曲第27番K.595
輸入盤LP 英DECCA SXL 7007 銀赤青SC盤
録音:1970年
*端正で程よく抑制を効かせた独奏には、深い表現力が感じられます。
推薦盤
disc3 : マルタ・アルゲリッチ(p)
アバド/モーツァルト管弦楽団
併録曲:モーツァルト/ピアノ協奏曲第25番K.503
輸入盤LP EU DGG 4793601 180g重量盤
録音:2013年 LIVE
*2013年ルツェルン音楽祭でのライヴ録音でアバドの追悼リリース。
緻密さと即興性が絶妙なバランスを保っています。
disc4 : イヴォンヌ・ルフェビュール(p)
フルトヴェングラー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
併録曲:グルック/歌劇「アルチェステ」序曲
グルック/歌劇「アウリスのイフィゲニア」序曲
輸入盤LP 仏フルトヴェングラー協会 XPMX.2273
録音:1954年5月LIVE MONO
disc5 : フリードリッヒ・グルダ(p)
アバド/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
併録曲:モーツァルト/ピアノ協奏曲第21番K.467
輸入盤LP 独DGG 2530 548 ブルーライン盤
録音:1974年
disc6 : スヴァトスラフ・リヒテル(p)
ヴィスロツキ/ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団
併録曲:プロコフィエフ/ピアノ協奏曲第5番ト長調
輸入盤LP 独DGG 138075 SLPM 赤ステ・チューリップ盤
録音:1959年
今日の写真 : 春の香り #3
曲目、演奏者、料金、3拍子揃った良い演奏会でしたね。
なかなかこう言う機会はないと思います。
銀河系の衝突の話は聞いたことがあります。それが壮大な星の運命なのですね。
何物も万物流転から逃れるわけにはいかない真理だと思います。
モーツァルトのピアノ協奏曲、特に後期のものはどれも粒ぞろいです。
短調独特の雰囲気のある20番の出だしを仲道さんはどのように弾かれたか興味が涌いてきます。
バレンボイムの旧盤(ECOと共演)のLP全集を学生時代にロンドンから個人輸入して楽しんでいました。
どうしてバレンボイムなのか、と思われるでしょうが、その頃は金銭的に余裕がなく単に安かったからです。
演奏には満足しておりました。と言うより正確に言うと曲に満足していました(当然ですが)。
当時(70年代前半)輸入盤は、ボックスセットが格段に安かったのです。「持ってけ泥棒」状態でした。
今でこそCDはそうなっていますが、当時はその衝撃的な価格で大変助かっておりました。
第20番と言うと必ずハスキルが定盤に挙げられます。異論はありません。清楚な基本路線の中にも、ハスキルのピアニズムが楽しめる事を多くの人が評価している帰結でしょう。
アバド&アルゲリッチも発売時によくぞアルゲリッチが弾いたと少々ビックリしましたが、アバドが勧めたとのこと。同じバックでピリスも弾いていますが、アルゲリッチの個性は良くも悪くも顕在でした。
<後半に続く>
この曲の盤も例によって沢山集まっていますが、その中でdindi_48さんが挙げられている以外の私の推薦盤を挙げるとすると、
Maria Tipo, Riccardo Chailly/London Philharmonic Orchestra (1983)
Piotr Anderszewski, Scottish Chamber Orchestra (2005)
Ingrid Jacoby, Neville Marriner/Academy of St. Martin in the Fields (2014)
年代が進むに連れ当たり前かもしれませんがピアノが現代的になります。
ティーポは私が一目置くピアニストですが、ハスキルに近いかもしれません。録音は多くありませんが技術・音楽共に大変上手な人で尊敬しています。ヤコビはピアニスティックという弾き振りではありませんが、マリナーの音楽作り共々、本来のモーツァルト的から少し離れ、ベートーベンのようにかっちりしたタッチでレコード芸術を楽しめる盤です。ルックスも仲道さん同様文句ありません。(笑)
昨日は寒くて参りましたが、こちらでは多分来週後半に桜が楽しめそうです。
ありがとうございました。
昨日の名残の雪は、明け方の雨ですっかり消え失せました。今朝は春の暖かさが少しだけ戻ってきたような気配がします。
一昨日のコンサートは大ホールの中央9列目の席でしたから、仲道さんの仕草も表情もはっきりと見てとれました。幾つになられてもチャーミングで美しい仲道さんに、デビュー30周年とは現在いくつ?などと不埒な妄想をしたり・・(笑)。
演奏もとても素晴らしかったです。第1楽章冒頭の劇的でうごめくようなオーケストラの長い伴奏を聴きながら、次第に仲道さんの集中力と緊張感が高まり、そのピークとともに最初の一音が出たときには、聴く側の私もホッとしました。会場にいたお客さんのほとんど全員が固唾をのんで聴いていたという感じでした。そしてその音色はリヒテルのような重々しい雰囲気はなくて、淡々とした美しい音色で哀愁に包まれていました。その後は仲道さんの仕草をただただ眺めながらオーケストラの演奏に聴き入っていました(笑)。
9列目中央とは特等席ですね。よく見えたことでしょう。いや、よく聴こえたでことしょう。(笑)
尚、言い忘れましたが、私の最も好きなモーツァルトのピアノ協奏曲は「第23番イ長調K.488」です。
ようやく春が来た感じがします。ありがとうございました。