モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第2番ニ長調K.211
No.99 : 協奏曲
先週の2月14日(水)は『ギドン・クレーメル、リュカ・ドゥバルグ&クレメラータ・バルティカ』の演奏会に行ってきました。会場はサントリー・ホール。演目はベートーヴェンとモーツァルトの室内楽曲&協奏曲の4曲でしたが、さらにアンコールが4曲もあってとても楽しいひとときでした。
2曲目のモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番の独奏はもちろんクレーメルです。80年代に録音したアーノンクール指揮の盤のような鋭く張り詰めたヴァイオリンではなく、柔らかさやしなやかさの中で音楽が進んでゆきます。雄弁で個性的なクレーメルのヴァイオリンが室内楽のような雰囲気のバックで楽しそうでした。
「第3番K.216」はすでに拙ブログでエントリー済みなので、今日は「第2番K.211」をエントリーします。
モーツァルトが残した5つのヴァイオリン協奏曲は、「第1番K.207」こそ1773年でしたが、残りの4曲は19歳の1775年にザルツブルクで集中的に作曲されました。「第1番」とは違って、この「第2番K.211」は明らかにフランス的な色彩が濃厚に表れています。ヴァイオリンの官能的で華やかな響きが、何とも耳に快いのです。
しかし、この「第2番」の僅か3ヶ月後に完成された「第3番K.216」では、同じようなフランス風のギャラント・スタイルでありながら、その規模の大きさや表現力の豊かさ、芸術的な魅力等が飛躍的に増加しています。ハイドン的な「第1番」とモーツァルトの独自性が色濃い「第3番」以降の曲にはさまれた形の「第2番」は、やはり過渡的な作品にみえて、モーツァルトとしては中途半端なのかも知れません。それでも、多彩なメロディーが駆け回るさまはとても楽しいです。
推薦盤
disc1 : ギドン・クレーメル(vn)
アーノンクール/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
併録曲:モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第3番K.216
輸入盤LP 独DGG 415 482-1 ブルーライン盤
録音:1984年 DIGITAL
*切れ味鋭く、しかも緩急自在なクレーメルのヴァイオリンが気持ちいいです。
ウィーン・フィルの伴奏にも安定感があり心ゆくまで楽しめます。
disc2 : アイオナ・ブラウン(vn)/アカデミー室内管弦楽団
併録曲:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲K.364
輸入盤LP 英argo 411 613-1
録音:1983年 DIGITAL
disc3 : ジェラール・ジャリ(vn)
パイヤール/パイヤール室内管弦楽団
併録曲:モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第1番K.207
国内盤LP 日DENON OX-7025-ND
録音:1974年
今日の写真 : サントリー・ホール 2018年2月14日撮影
第2番ですか。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲というと3番と5番以外はあまり聴いておらず改めて聴いてみました。
おっしゃる通り第3番では作曲上の飛躍があります。でも1番、2番、3番・・と発展したようには感ぜず、第2番が特殊に聴こえます。
ギャラント様式と言うか、マンハイム楽派の音楽になっています。出だしを聴いたら、私の好きなカール・シュターミッツのト長調のフルート協奏曲の出だしそっくりではありませんか。どちらが先かはわかりませんが。ボヘミアの音楽にこの手の音楽が多く密かに楽しんでいます。HMVで入荷を待っているのもFranz Xaver Richter (1709-1789)という作曲家の音楽です。
この時代の音楽を2流と言って片づけるのは野暮というもので、偉大さなど考えず楽しさに浸るに限ります。
第2番となると全集でないと収録されていないことが多く演奏も限られます。クレーメルは聴いておりませんが、私が良いと思うのは、
Giuliano Carmignola, Carlo de Martini/Il Quartettone (1997)
今のCarmignolaはどちらかというと嫌いな部類に入るヴァイオリニストなのですが、ここでの演奏は良いです。バックも少人数の室内オーケストラで、行かれたコンサートの演奏に近いのではないでしょうか?
Kristóf Baráti, Hungarian Chamber Orchestra (2015)
もライブながらとても好感が持てます。
dindi_48さんは距離のハンデをものともせず、よく東京までコンサートへお出かけですね。それだけお好きなのでしょう。
珍しい曲のエントリーありがとうございました。(尚、第1番の作曲年は1773年のタイプミスですね。)
20世紀のわけありませんね(笑)。明らかなタイプミスでした。ご指摘ありがとうございました。
カルミニョーラの演奏はBRILLIANTレーベルの旧盤の方が肩の力が抜けてというか、落ち着いたテンポで独特の優美さがあって良いですね。仰るように、今回のコンサートに雰囲気は近い感じです。一方アバドと共演した2007年のARCHIV盤は、やたら強弱が大きくせわしない演奏でした。
一昔前は交響曲や協奏曲のCD全集など滅多になくて、ほとんどは数ヶ月ごとの分売だったように思います。ところが今は、廉価でのセット発売が多いですね。有り難いといえば有り難いですが、あの翌月の新譜発売予告に次の一枚を期待するワクワク感は少なくなりました。
カルミニョーラは昔はブリリアント録音のように演奏していたのに、どうして現在のようになってっしまったのでしょうか?
自意識過剰と思わせる演奏に変質しているように感じます。ですので、音楽以前の人間性を磨く必要があり、そういう師がいないものかと余計な心配をしてしまいます。録音した1997年より少し前から変わってきているようです。古楽器をやり始めた頃でしょうか。古楽の団体は、楽器は古楽器でも演奏は超モダンという逆説的なケースが多く、頭で研究し過ぎるのもどうかと思ってしまいます。自分の心の中にある美意識をもっと大切に信じたら良いんじゃないかとも思います。
ワクワク感については、dindi_48さんに全く同感です。
そんなに一挙に手に入れてしまっても、1枚1枚を大事に聴くわけがありません。CD販売も商売で、ユーザによかれと思ってのことかとは思いますが、月に1枚、2枚、そんなスローなペースの時代にあったはずの豊かさは確実に失われています。お互いに、月に1枚買うのがやっとだった小さい頃の懐かしい思い出を大切にしていきましょう。